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『Homemade Villageをつくる言葉たち vol.2』

「Homemade Village」を、キーワードで深堀りをしていくコラム連載「Homemade Villageをつくる言葉たち」。

Homemade Villageはどんな場所なのか、どんな景色を目指しているのか、つくり手である代表・竹内さんの言葉から、探っていく連載です。

前回の記事では、「Homemade」という言葉に込められた意味について聞いていきました。今回掘り下げていくのは、「Village」という言葉と竹内さんの描くコミュニティのイメージです。

「Village」を和訳すると「村」。「村」は町よりも小さな規模の地域社会で、実際の定義は国ごとに違っているようです。村という言葉をイメージしてみると、住む人々の顔が見えるような近い距離のコミュニティという絵が浮かんできます。

実際の市町村の村、たとえばHomemade Villageのある山梨県北杜市には、移住者も増えつつも、先祖代々ずっとその地に住み家を受け継いできた方が多く、地縁・血縁で成り立ってきたコミュニティがベースにあるのを感じます。

一方都会に目を向けてみると、村くらいの面積のなかに無数の人々が住んでいて、その多くは地域から上京してきた人たち。おそらく「利便性」を求めている人が多いのではないでしょうか。

血縁や利便性を求めて住む人々のコミュニティと、それ以外にあるとすれば、何かしら共通の興味趣向によってつながった人々のコミュニティがあると考えることができます。

 

「Intentional Community:社会的、政治的、宗教的、または精神的ビジョンを共有し、一般社会とは異なる独自の様式の生活を送る共同体。責任や資源を共有する場合も多い。」

出展:wikipedia

 

竹内さんとの会話のなかで出てきた「Intentional Community」というキーワード。

では、Homemade Villageは、どういう目的や興味をもった人たちが、どういう過ごし方をするコミュニティになっていくのでしょうか。

竹内さんがこれまでに訪れたオーストラリアのエコビレッジや、オランダのスクワット、『simplife』の撮影で出会ったアメリカ西海岸のタイニーハウスコミュニティで感じたことから、イメージ像を紡いでいきたいと思います。

 

竹内さん「まず、『エコビレッジ』はHomemade Villageを考える入り口としてわかりやすいかも。日本でも理解が広まりつつあり、自然の力を借りて持続可能性の高い生活を営むという要素は共通していると思っています。」

 

エコビレッジとは「その住民の参加型プロセスを通じて、4つのテーマ(社会・文化・生態系・経済)を中心に、社会環境と自然環境を再生するため、意図的に設計されたコミュニティ」のこと。

出典:Global Eco-Village Network

 

「地震が起きるたびに感じることは、多くの人が生きていくスキルを手放してしまっているということ。ある程度のスキルがあれば自立できるし、それではじめて周りの人を助けることができると思うんです。

Homemade Villageはタイニーハウスの集まりでありながらも、その暮らしの周辺に資源の循環を積極的に取り入れていこうと思っています。それが他のタイニーハウスとの違いかな。自分たちの生活に必要なものを、自分たちの手で生み出す文化を育てていきたいですね。

ぼくが見てきたエコビレッジは規模が大きく、敷地や農地を管理するためにWWOOF(ウーフ・お金のやりとり無しで食事/宿泊と農作業を交換する仕組み)のメンバーに頼らないと回らないなーと感じました。

でも、住人たちがお互いの未来を想像しながら、助け合って生きていく姿にはすごく共感したのを覚えています。」

助け合いながら暮らすよさと、その中でも自立をして生きていくスキルを持つ大切さ。Homemade Villageでは、自分の暮らしをつくることが楽しめる「Homemade」の心が、やはりポイントなのだと感じます。

 

もう一つのIntentional Communityの例、オランダのスクワット(空き家の不法占拠)コミュニティはどうでしょうか。

 

竹内さん「僕がオランダに住んでいた頃、スクワットした建物に友達が住んでいて、頻繁に通っていたんだ。そこにもある種のコミュニティが生まれていたのだけれど、一つの建物のなかにみんなで住んでいたので、人と人との距離が近すぎてプライバシーがあまりないと感じてたんですよね。」

スクワット文化というのは、使われていない土地や建物を占拠し、住居やカフェ、アーティストの拠点として使うというムーブメントのこと。1970年代からはじまり、2010年には一部のスクワットを合法化するという動きもありました。

竹内さん「音楽やアートなど同じような志向性を持った人たちが、一緒に暮らしているという意味ではHomemade Villageの考えるIntentional Communityと近いと思います。

アムステルダムのスクワットは某国大使館の跡地で、住民の居住フロアに共有のキッチンやトイレ、シャワーブースがあり、別のフロアには旅人用のゲストハウスやチャイショップ、メディテーションルームや屋上のフリースペースなどもあり、常に数十人のメンバーと旅人で賑わっていました。

多国籍な旅人のカルチャーと音楽が世界中から人を集め、少しずつ自治的なルール設定をしてコミュニティの運営をしていたみたい。

たとえばHomemade Villageで考えたら、登山やクライミングが好きな人たち、乗馬が好きなひとたち、サーフィンが好きな人たちとか、そういう好きなことが同じ人でコミュニティをつくってタイニーハウスで暮らすというのもおもしろいんじゃないかな。」

たしかに、好きなアクティビティごとにVillageができたら、それぞれの旅の途中でしばらく暮らす場所のようになり、移動ができるタイニーハウスの利点が活かされるようにも思います。

竹内さん「Village ×○○の組み合わせは、無限の可能性があるよね。タイニーハウスのもつほどよい流動性は、住む人の生きるスキルも高められるし、心の向くままに暮らすことにもつながる。

Homemade Villageに住む期間は一生ではなくて短期間かもしれないけれど、そこで暮らす間にもったマインドはずっと残っていくものだと思ってます。」

 

そしてHomemade Vilageをつくるきっかけにもなった、アメリカのタイニーハウスコミュニティについて。

竹内さん「時系列に並べると、スクワットは90年代後半、オーストラリアのエコビレッジを訪れたのは2000年ごろだったかな。2006年と2007年に当時在籍していたNPO団体で開催したエコビレッジ国際会議にスタッフとして参加、その後しばらく経って2015年にアメリカのタイニーハウスコミュニティに出会ったという感じです。

当時アメリカで話題になっていたタイニーハウスの存在を知って、実際に暮らしている人の話を聞こうと『simplife』という映画の撮影をしている中で「Simply Home Community」というタイニーハウスのコミュニティに行くことができて、そこで大きな衝撃を受けたんだよね。

取材当時、コミュニティのメンバーだったLinaは、タイニーハウスを使ったコウハウジング(それぞれが独立した住空間を持ち、共用スペースと水回りなどの設備を共同利用する集住の形)をアメリカで初めて挑戦するんだとワクワクしていました。

 

竹内さん「自分が体験した中では、エコビレッジは大きすぎたし、スクワットは窮屈すぎたのだけど、タイニーハウス・コミュニティはその2つのちょうど中間くらいの物理的・心理的距離感があるように思えて「これ、すごくいい!」ってすぐに感動しちゃって。

帰国後、エコビレッジで学んだ資源の循環、スクワットのカルチャー、タイニーハウスコミュニティで見た所有と共有のバランス、それらの特徴を上手に組み込んだコミュニティをつくりたい!と思って、それに適した土地を探し始めました。

今の土地に出会ったのが2018年10月で、廃墟のように荒廃していた工場跡地を再生するのに5年以上かかってるね。ようやく思い描いていたタイニーハウス・ビレッジの姿に近づいてきたかな。」

「まだまだ事例が少ないのでやってみないと分からないことばかりだけど、まずはこんな感じのビレッジをつくるぞ!というメッセージを発信しようと。今年の夏から宿泊できるような体制を整えている最中で、色々な人に利用してもらって、将来的には実際に暮らせるタイニーハウス・ビレッジをつくりたいというのが夢ですね。」

竹内さんのイメージするHomemade Villageは、まだこれからつくりあげられていくもの。実際にどんな人が住むようになるのか、どんな仕組みがあるとおもしろいのか、模索をしながらつくっていくことになります。

読んでくださったみなさんにとって、自分ならどんな要素をもったコミュニティに暮らしたいか、考えてみるきっかけになればうれしいです。

オープンハウスなどでHomemade Villageを訪れる機会には、ぜひタイニーハウスのなかに入って、実際の暮らしをイメージしてみてくださいね。

 

語り手:竹内友一

聞き手:森野日菜子

写真:kota竹内友一