2025年1月6日、雪がちらつく仕事はじめの今日。私はいま、Homemade Villageのタイニーハウスにいます。
ノートとPCと、テイクアウトしてきた珈琲、持ち物はほぼそれだけで、スマホはバックにしまって。
6か月になった娘を預けて家を出るときは後ろ髪を引かれたけれど、自分の時間をタイニーハウスで過ごすことを想像しながらの道中、久しぶりに母親じゃない自分に戻れた気がしてとてもわくわくしました。
2025年のはじまり。
Homemade Villageという場はどんな研究をして、どんな方々と出会うのでしょうか。代表の竹内さんとのたわいない会話と、そこから感じたことを、今日は言葉にしてみようと思います。
“ひみつ基地”は、どんな場所だっただろう
編集部・森野日菜子:あけましておめでとうございます~。年末年始工場はお休みでしたが、竹内さんはいろんな整理整頓と読書と、されていたんですね。机のうえに広がっている書類とメモ書きから伝わってきます笑。
代表・竹内友一:ほんと、なぐり書きのメモだらけだね笑。お正月に時間があったから、あらためてHomemade Villageを伝える言葉の定義をしたりしてたんだよね。
森野:ふむふむ。
竹内:うーん、たとえば、”ひみつ基地”ってなんだろうなとか。最近よくタイニーハウスを表現する言葉としてつかっているんだけど。ひみつ基地は、子どものころに誰にも邪魔されないで自由に夢を見られる場所だったな、と。
森野:なるほど。
竹内:考えてみると、今の世の中で、もやもやを感じている人って多いけれど、何に悩んでいるかすら分からない人が多いんだと思う。身の回りのモノはもちろん、インターネットからの情報もすごく多いから、自分自身がそこに埋もれちゃってる、というのも1つの原因になっているんじゃないかな。
だから、モノとか情報とか、背負い過ぎていたものを一旦横に置いてみたらいいと思って。小さな暮らしをタイニーハウスで体験することで、子どものころにひみつ基地で夢見ていたような純粋な気持ちに気づくような。
当たり前かもしれないけど、子どもの頃って、まわりとは関係なく自分が本当に見たい・したい本質的なことを夢見ていたと思うんだよね。
森野:そういうことに気づいてもらえる装置として、タイニーハウスもあるよ、と。
竹内:うん。それですぐに問題解決ができるとかじゃないんだけど、どちらかというとその人なりの問題を発見するきっかけになれば面白いな。
Homemade Villageに来た人たちのほんの一部でも、昔ひみつ基地で自分の未来を夢見てたような時間を過ごしてもらうには、どんな設えが必要なのか妄想をしてたって感じかな。
日本のタイニーハウスムーブメントが、社会のセーフティネットになれたら
森野:日本の社会のどこにニーズがあるのか、どんな人に求められているのかもHomemade Villageをやるなかで研究しているところですかね。
竹内:これからの社会は、人口や各世代の価値観も確実に変わっていくしね。
これまでの「家」って、大きいほうがいいっていうのが常識だったんだと思う。お城をつくっていくようなイメージだったんじゃないかな。自分を快適にしてくれるものを増やす、それが豊かさを感じるための手段だったんだと思う。
実際は身の回りにモノを増やしていったことで、モノに埋もれて、自分がどこにいるのかわからなくなったという人もいると思う。
僕自身、都会で暮らしていたとき、街中の看板が発している「わたしを見て!買って!」っていうすごく強いメッセージに耐えられなくなって。看板が少ないところに住みたいと思ったんだよね笑。
都会的な暮らしとか、大きな家とか、そういうメインストリームを否定するつもりはなくて。そういう流れが合わないと思うような人が、タイニーハウスっていう選択肢を知ってくれたらいいなと思う。
森野:そういう存在、必要ですね。
竹内:アメリカのタイニーハウスムーブメントは、大量消費文化のカウンターカルチャーっていう人が多いんだ。でも僕は、いま主流になっている文化に対抗するわけではなく、そこが合わない人にとって選択肢になるような受け皿になったらいいな。メインを補完するセーフティネットみたいな、サブシステムとしての立ち位置。
メインの文化に合わないとか、こぼれ落ちるとか、あまり今までは表に出してなかったし、どういう表現をするのがいいのか悩んでいるところでもあるんだけどね。
森野:悩ましいですよね。でもHomamde Villageのタイニーハウスワークショップに参加したとき、つくるに熱中しているうちに、「手でつくるって生きる力だな」とか「こういう暮らしいいな」と自然と感じていました。
悩んでいてもいなくても、どんな人にとっても、気づきや出会いがある場だなと。
竹内:うんうん、確かに。映画『simplife』のなかでも、Todd Millerさんが「Drop out じゃなくて、Drop in」という風に言っていて。メインストリームからこぼれ落ちるというニュアンスではなくて、新しい世界に飛び込んでみるというような意識がいいかなと思う。
森野:いいですね、Drop in。
竹内:いまとちょっと違うライフスタイルを探している人にHomemade Villageのタイニーハウスがフィットするといいよね。
そういう人たちにとって、Homemade Villageとしてどんな出会いの場を提供できるか、僕らはいま模索しているところ。形が見えているわけではなくて、2025年もあれこれ悩みながら研究していきたいね。
体験宿泊「Stay」もはじまるし、複数台ではなくて1台で住まうことができるタイニーハウスの形も考えていこうと思ってる。
森野:いろんな方たちがVillageに来て、共感してくれた方たちと一緒にあれこれ試していきたいですね。
(竹内さんとのお話ここまで)
いつもの景色と少し違うものが見たくなったとき。
ほんの小さな勇気をもってした選択が、意外なところまで連れてきてくれるものだと、思うことはありませんか。
大きな決断は節目節目にあるとして、毎日のちょっとしたところにも、私たちそれぞれの選択があると思います。今日はちょっと違う道を散歩しようかなとか、この本読んでみようかなとか。
私は社会人になってから、新卒で入社した会社を1年足らずで辞めて、ふらりふらりといろんなところに立ち寄りながら今日まで来ました。若気の至りだったと思うことも多いですが、すべての選択の結果見えているいまの景色が、とても好きです。
北杜に暮らし、夫が農業をして、わたしは本業の傍らタイニーハウスで原稿を書いている。そんな未来になること、きっと会社を飛び出してまっさらになった私は想像してなかったと思います。
世の中にはHomemade Villageのような場所があって、竹内さんのような大人がいて、人生を自分の手でつくってきた人たちがたくさんいる。そのことに時折、救われます。
大人も子どもも、いつでも”ひみつ基地”に立ち戻ったらいい。ちょっと立ち寄ってみるような感覚で、いろいろな世界を覗いてみるのもいい。
ひとりでじっくり遊んで、心が動くことを見つけて、新しい仲間と出会う。そうして、日々の暮らしをどんな風にしたら自分らしくあれるのか、考えていけたら。
Homemade Villageは今年も、みなさんの心のひみつ基地として、扉を開けて待っています。
写真:kota
文章:森野日菜子