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Homemade Village

森を手入れしたら、畑ができる。温室に『ヒューゲルカルチャー』をつくってみた

パーマカルチャーの手法のひとつに、「ヒューゲルカルチャー」という菜園をつくる手法があります。

ドイツや東ヨーロッパで行われてきた方法で、一番下に丸太を置き、枝や落ち葉、コンポストを重ねていき、野菜を育てるベッドをつくっていくというもの。「ヒューゲル」とはドイツ語で「丘」という意味で、つくった丘の上で野菜を育てるというやり方です。

この手法はもともと、砂漠地帯のような水分や養分が少ない場所でも野菜を栽培できるようにと考えられたものなのだそう。一番下に丸太や枝を置くことで土のみよりも水持ちがよく、養分の高いコンポストなどを入れることで野菜に必要な栄養素をベッドのなかで生み出すことのできる仕組みになっています。

重ねる順番は、下から「木のような炭素率の高いもの」⇒「コンポストのような窒素分が多く、炭素率の低いもの」。丸太は、糸状菌を多くもっていて、土のなかの構造を植物が育ちやすいようにしてくれる効果があるのだそう。そしてつくられた構造のなかで微生物が活性化し、炭素と窒素のバランスを取り、植物にとってよい環境がつくられるという仕組みになっています。

そんなヒューゲルカルチャーを、Homemade Villageにもつくってみよう!と、今回は温室のなかに取り入れてみることに。北杜市内で自給農園めぐみのを営む、湯本さんにリードしてもらいながら、実際につくってみました。

Step 1 : 木枠をつくって設置

枠を使わずに、上のイラストのように丘にしていくやり方もありますが、十分な栽培スペースをつくろうと思うと大きな丘が必要になってしまいます。そのため今回は、温室に収まるよう、木枠をつくってその中に素材を重ねていくことにしました。

今回つくった木枠は、3.5m×1mを2つ。杉の足場板を3段に重ね、防腐剤としてウッドロングエコを塗っておきます。ヒューゲルカルチャーはうまくいけば5年10年と長い年月保つことができるのだそう。枠がどのくらいの期間持つか、これもまた実験です。

Step 2 : 丸太を敷く

まず一番下には、丸太を入れていきます。量の目安はだいたい、木枠の半分くらい。

今回つかった丸太は、Homemade Villageをつくるときに伐採したり、枯れて朽ちたもの。森のなかで倒れてしまった木や、整備が必要な木をつかうことで、森の手入れにもつながります。

「丸太も枝も使うので、森の手入れをすることになる。森を片付けて畑(ヒューゲルカルチャー)ができるっていいですね。」

そんな会話をしながら、2つの木枠のなかに丸太を敷き詰めていきます。

Step 3 : 小枝、落ち葉を重ねる

丸太の間にすき間があり地面が見えてしまうところもあったので、小枝とコンポストで埋めてみることに。重ね順にこだわりすぎず、感覚的に埋めていきます。

ある程度平になったところに、次は落ち葉を敷き詰めていきます。この落ち葉もHomemade Villageで集めたもので、ワイヤーでつくった堆肥枠にたくさん保管しておいたもの。街中では厄介者にされる落ち葉ですが、自然の近いところでは貴重な資源です。

Step 4 : コンポスト、黒ぼく土、畑の土を重ねる

 

Homemade Villageでは、代表の竹内家ででた生ごみやVillage Farmで刈った草のコンポストをつくっています。今回はそのコンポストを重ねていくことに。

「コンポストの生ごみが十分に分解されていない=生っぽくて臭いがするときは、落ち葉(炭素資材)・米ぬか(窒素資材)・水を加えて、微生物に分解してもらいましょう。今回はこのベッドの中で分解をしてもらおうと思うので、水も少し加えます。しばらく分解による発酵熱が出るので、落ち着くまでは野菜を植えないで待っておきましょう。」

湯本さんのアドバイスのもと、コンポストを敷いたあとにジョウロでまんべんなく水を撒きます。

その上に、Homemade Villageの敷地内にあった黒ぼく土を重ね、最後にもともとこの場所にあったレイズドベッドの土を敷き詰めます。

こうしていくと分かるのは、この大きなレイズドベッドに対して、栽培に適している土が必要量は表面の部分だけだということ。もし丸太や小枝を重ねず、下から全部を土で埋めようと思うと、かなりの量、しかも養分のある土が必要になり、用意が大変です。

周辺の森林資材を活用でき、土も少なくて済み、長く養分を保つことができるヒューゲルカルチャーの手法。理にかなっていることがわかってきました。

Step 5 : 稲わらを敷いて寝かせ、種まきの準備

今回はコンポストの分解期間を取るため、すぐには種まきや苗の植え付けはしないでおくことに。

完熟したコンポストなどをつかう場合は、寝かせる期間は少しだけで大丈夫かもしれません。

表土が乾燥しすぎたり、せっかくの微生物が動きにくくならないよう、表面は稲わらで覆っておき寝かせておきます。

2週間程度様子を見て、温度も下がっていたら、まずはたくさん余っている種を蒔いてみるのがおすすめだそう。自家採取できた種や、ベビーリーフミックスなどの手ごろな種で、野菜が育つか試してみましょう。

冬は温床にもなり、高さがあるので作業性もUP

今回ヒューゲルカルチャーの栽培床をつくってみて、Homemade Villageのような菜園にはメリットな点がいくつも発見できました。

まず、高さのある栽培床になるため、腰が痛くならずに作業できること。種まきや草取り、収穫など、立った姿勢でできるのはとても楽。植物との目線も近いので、よく観察することもできます。

もう一つは、温室内につくったことで冬の間に苗をつくる温床にもなること。冬野菜を採り終えたらコンポストや米ぬか、落ち葉、水分を足し、発酵させて温かい苗床にすることができそうです。電気を使わず、微生物のつくるエネルギーで苗を育てることができますし、使い終えた温床はそのまま栽培床の資材のひとつとして使うこともできそう。可能性を感じます!

実際につくってみたことで、他の使い道や工夫も見えてきて、学び多い時間になりました。

今年はこのヒューゲルカルチャーの栽培床でも野菜を育ててみるので、Homemade Villageを訪れる際には、ぜひ様子を覗いてみてくださいね。

文:森野日菜子

写真:kota