homemade.village
News

simplife -「身の丈の暮らし」をテーマにしたロードムービー

simplifeは、「身の丈の暮らし」をテーマにしたロードムービー。アメリカ西海岸で広がりをみせる「タイニーハウス・ムーブメント」のパイオニアたちを訪ね、小さな暮らしや多様なライフスタイル、コミュニティとの共生など、新しい幸せのカタチを探した。様々な理由からタイニーハウスを選択した人たちの暮らしはとても個性的。不必要なモノを手放したことで、たくさんの自由を手に入れることに成功した彼らの言葉や暮らしの景色には、自分らしく生きるためのヒントが散りばめられていた。4年前の春、僕らは半ば運任せにタイニーハウスのパイオニアたちを訪れることになった。

いつも感覚的に行動してしまうタイプの僕も、あの時の衝動はしっかりと覚えている。最初にタイニーハウスの世界に引き込まれたのはDee Williamsの映像だった。それまでの僕はただ自分が旅先で『自分用の居心地が良い空間が』という単純な理由で引っ張って走れる小屋を思い描いていた。でもDeeはタイニーハウスによって人間性を回復したのだと語った。「たった1回の人生で自分らしさを発揮しないなんて、身の回りの愛を感じられないなんて残念ね」と。すぐにチケットを取って彼女に会いに行った。初めてのアメリカ、ほんの数日の滞在で僕は完全にタイニーハウスの深みにはまってしまったのだ。

このロードムービーをつくるきっかけは、ある街でふらっと入ったゲストハウスでのこと。そこで出会った青年たちと仲良くなり宴会が始まると、「タイニーハウス、知ってますよ。僕らも近々つくろうと思ってたんです!」と彼らが胸の内を話してくれて内心ワクワクした。でも「合板で箱を作って、下にキャスターをつければ安く作れるし、怒られれば移動もできる。税金も要らない。誰でも簡単につくれるしね。」自分の思い描いていたものと全く違うものが同じ言葉で語られていて正直驚いた。そそくさとその場を離れ、ドミトリの2段ベッドに潜り込んだ。

翌日、映像作家の友人に電話をかけた。「実際のタイニーハウスを見たい。そこに住む人の生活が知りたい。どんな想いを持ってタイニーハウスを選択したのか、世間ではどのように認知されているのか。そんな映画がつくれないかな?」

クラウドファンディングで資金を集め、半年後に僕らはシアトルの空港にいた。友人は自分で飛行機の予約をしてそこにいた。また、大船渡で被災した英語教師であり、タイニーハウスのブロガーも新たな仲間になった。

車をピックして、最初に向かったのはDeeのタイニーハウス。そこでは、ひとつひとつのモノにストーリーがあって、どれだけ愛情深く接しているのかが窺えた。料理が得意ではないようで、キッチンは必要最低限というよりは、キャンプに限りなく近い。その代わり、料理の好きな人のところでご飯を食べるのが得意。シャワーも本を読むのも自宅以外で。所有する必要のないものは積極的に外に求めることで、寝床はシンプルに、そして街全体が彼女の暮らしを支えていた。「大きな家族の一員になった気分よ」、肩の力が抜けた自然体の言葉にタイニーハウスの世界に飛び込んできたことを実感した。

約2500km、キャンピングカーで駆け抜けた2週間。様々な人の暮らしを垣間見ることができた。僕らの出会った人たちは口を揃えて「家(タイニーハウス)ではなく、身の丈の暮らし、自分らしい生き方を求める姿勢(タイニーハウス・ムーブメント)が大切なんだ」と言う。どの人も意識的に住まいを小さくすることで、それまで埋もれていて自分でも気づかなかった個性を再発見し、それをうまく使いこなそうとしていた。また、量を求めない代わりに質を高めることで、空間がその住人のキャラクターを表していた。

ムーブメントのきっかけをつくったJay Shafer、山奥に家族で住むMorrisonファミリー、4つの小屋のコミュニティ、牧場の真ん中に暮らすTammyとLogan、手づくりの家で暮らす伝説的な編集者Lloyd Kahnなど。それぞれの景色がとても魅力的だった。
Loganは「タイニーハウスは自分を表現する方法なんだ。身体にぴったりと合うように仕立てられたスーツのようにね」と話してくれた。誰にでも合うように大量生産されたものではなく、自分自身をしっかりと見つめ直し、それに寄り添うような暮らしのカタチがタイニーハウスの本当の姿なのかもしれない。

過去の常識や世間体すらも手放して、いまの自分自身に向き合うことで、何に支えられていて、どのような役回りを担っていくのか。彼らの「自由」は決して社会から切り離された生活をすることではなく、周りとの良い関係性をつくり出すことのようだった。身軽でいることで、常に変化する環境に対応できる柔軟性を持ち、お互いに足りないものを補い合う、自然界の仕組みに似た状態がそこにはあった。

ロードムービー「simplife」
手づくりの家でシンプルに暮らす人たちの物語。ロードムービー「simplife」はタイニーハウスの技術的なサンプル集ではなく、そこに暮らす人たちの想いにフォーカスして製作。出会った人たちは暮らしをより豊かに楽しくするアイデアを持っていて、自分らしくユニークな方法で人生の主人公になっていた。そこには、タイニーハウスという言葉では括れない、多様な生き様がありました。(2017年製作/日本語字幕/78分)
→simplife公式サイト