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タイニーハウスをつくりながら、暮らしの設計にも目を向けてみる。Tiny House Workshop DAY5-6

こんにちは、HOMEMADEプロジェクト編集部の日菜子です。

新緑の時期が過ぎ、田植えも終わってまわりの景色が青々としてきた6月下旬。

梅雨入りはしたけれども、晴天率の高い北杜市では太陽がよく顔を出しています。そんな梅雨と夏の間で強い日差しが降り注ぐHomemade Villageで、Tiny House Workshop2023のDAY5-6が行われました。

Tiny House Workshopは、ひとつのタイニーハウスをみなで手を動かしながらつくるなかで、それぞれが持ち寄った問いを探求していくプログラム。5月から本格的に構造づくりがはじまり、電動工具の使い方や木材の見方などを学びながら、つくっていく段階に。

のんびりつくっていると終わらない!と、ビルダーさんたちのリードに必死についていく2日間でした。(前回のDAY3-4の様子はこちらから)

アールの屋根と、壁の構造をつくる

今回も、2つのチームに分かれて作業を進めます。

チームAは、屋根づくり。一般的な屋根といえば、三角形の屋根が一般的ですが、すでにHomemade Villageにあるタイニーハウスが三角形の屋根なので、今回は丸いアールの屋根に挑戦します!

チームBは、壁の構造づくり。ドアや窓の位置が決まったので、それらをはめることができるように壁の構造を切ったり、枠組みを入れたりしていきます。

私はBチームに入れてもらい、壁の設計図を見ながら、どこをどう切って、どんな構造をつくるのかを確認しながらの作業でした。大きな構造をつくるよりも細かな作業で、とくに窓枠の部分は1mm、2mmのズレで窓が入らない!なんてことにもなるので、慎重に…。と思うけれど、手がプルプル。それにしてもインパクトドライバーが重たい!そして日差しが暑い!

大工さんってすごいなあ…。そんなことばかり思う私でした。

タイニーハウスを”みんなでつくる”意味は、なんだろう?

タイニーハウスをつくってみたい!という思いをもって集まり、ともに学んでいるTiny House Workshop。ふと、「ただつくれるようになりたいなら、1人1つずつ、つくるというやり方もある。どうして、”みんなで”1つをつくるんだろう?」と思いました。

その意味は、参加者のみなさんが自分なりの何かを見つけていけばよいのだと思うのですが、わたしも参加させてもらうなかで、いくつか気が付くことがありました。

竹内さん「僕はいつも、”こういうのやろう!”と言うけれど、それを実現するすべてを自分でできるわけじゃない。むしろ、ぜんぶ自分でやる必要はないと思ってるんだよね。
できる人が周りにいたり、旗を振ることで集まってくれたりするから。」

竹内さんとお話していたある日の言葉。

これが、わたしの中でひとつの意味になっています。

実際に、タイニーハウスをつくる経験をするなかで、自分の得意不得意が見える瞬間があります。一方隣では、自分が苦手としていることをすんなりとできる人がいる。

もちろん自分の技術の上達を目指すことも必要ですが、自分が描く暮らしをつくるために、どこは自分がやり、どこは得意な人に任せるのか、そういう考え方も大切なのかもしれません。

もともと暮らしは、自分ひとりで成り立つものではなくて、もちろん自分だけのプライベート空間はあれど、ゆるやかに外の世界や他者とつながっているもの。

タイニーハウスそのものは独立したもので、動かせるという点では「ひとりで自由に生きる」ということは叶いやすいのかもしれないのですが、どこかに根をおろすとき、自分の描く暮らしができるかどうかは、実はまわりとの関係がカギなのだと思います。

タイニーハウスとともに生きることは、一人で暮らしのすべてを完結させるのではなく、まわりの自然環境や住人とのかかわりのなかで、心地よい関係を見つけて紡いでいくことなのだと。「みんなでつくる」ワークショップを通して、そんな発見がありました。

そうやって考えていくと、タイニーハウスを置く環境をイメージしやすくなってきます。

断熱も、実際の暮らしイメージすることが大切

今回DAY5は、建築家として活動しエコハウスや断熱の最前線を知っていらっしゃる、みかんぐみ共同代表/エネルギーまちづくり社・代表取締役の竹内昌義さんをお招きし、断熱についての講義をしていただきました。

「脱炭素社会とは、どのような社会か、どんな風にしたら脱炭素社会ができるのか。」という問いからはじまり、古くから続く日本家屋の思想や構造について、温度と湿度のコントロールについて、などなど。

「断熱」という入り口からここまで幅広い話につながるのか!と、正直なところびっくりしてしまいました。

暑い・寒いに頭を悩ませる住環境は嫌なので、断熱は大切。ただ、断熱だけにお金をかければいい家になるのかと言われたら、そうではありません。

竹内昌義さん「断熱を考えるとき、バランスが大切です。どんな暮らしをしたいのか、をまず考えること。そうすると、どのくらいの断熱が必要なのか、どのくらいお金をかけるべきなのかが見えてくるはずです。

合わせて、イメージする暮らしにはどのくらいのエネルギーが必要なのか、自然エネルギーを導入できそうかを考えてみてください。」

断熱はとにかく暖かければOK、できるだけお金をかけなきゃと思っていた私にとって、バランスという言葉にはハっとさせられました。タイニーハウスだけでなく家のことを考えるとき、どうしても間取りや配置、性能や資金のことに頭が行きがちですが、一番大切なことは「どう暮らしたいか」ということなのだと、改めて感じました。

タイニーハウスを起点に、どう暮らすか

タイニーハウスを暮らしの一部として取り入れたいとき、どんな場所でイメージをつかんだらいいのでしょうか。

タイニーハウスをキャンピングカーや、トレーラーハウスと同じ「動かせる空間」だと捉えるなら、展示場に足を運べばいいのかもしれません。ただ、まわりとのつながりの中でタイニーハウスの暮らしをつくろうと思ったら、展示場では見れないこともあります。

そんなとき参考に足を運んでもらいたい場所の一つが、Homemade Villageです。

Homemade Villageには、現在3つのタイニーハウスと、水場やラウンジがあるコモンハウス、野菜が育つ温室とVillage Farmがあります。ここはいわば、タイニーハウスを取り入れたコミュニティです。タイニーハウス1つだけで完結させるのではなく、いくつかのタイニーハウスがあり、みんなでつかえるスペースや、食べ物を育てる場所もある。

竹内さんが、2015年にアメリカ西海岸を旅するなかで見つけた、タイニーハウスをいかした暮らし方のひとつです。

竹内さん「もともとはタイニーハウス単体で暮らすことが僕の理想ではあったけど、小屋のなかにトイレやシャワー、キッチンをつけてインフラを整えたら、どうしても高額になってしまうし、セルフビルドのハードルも高くなってしまう。

それなら、『simplife』に出てくるアメリカのタイニーハウスコミュニティーのように、複数のタイニーハウスでインフラを共有するコミュニティーをつくれたら、日本でもタイニーハウスに住むことが現実的になるのかなって考えるようになったんだ。」

– 記事『タイニーハウスってなんだろう。暮らしを手づくりすると見えてくる、「小さな家でしなやかに生きる」マインドタイニーハウスってなんだろう。』より

私だったら、この暮らし方はとても心地く続けていけそうです。なぜなら、自分だけの空間は大切だしシンプルに生きたいけれど、ぽつんと一人は寂しくて、近くに気の合う友達が住んでいたり、一緒に畑をいじったり、料理をして食べたりする時間が好きだから。

海のそばにおいて、いつでもサーフィンに行けるようにする?

静かな森のなかで、アトリエとしてもつかえるようにしたい?

土日は人通りがある場所で、育てた野菜を売れるようなスペースにしたい?

子どもが遊んでいるのを眺めながら、PCワークをできるようにしたい?

こんな風に、タイニーハウスを持つ人それぞれのスタイルがある。

だからこそタイニーハウスそのものの設計はもちろん、暮らしの設計にも目を向けることが、タイニーハウスのある暮らしをより豊かにしてくれるのだと感じます。

あなたなら、タイニーハウスとともにどう暮らしますか?

Tiny House Workshopに参加しているメンバーはもちろん、タイニーハウスやHomemade Villageに興味をもってくださっているみなさん、ぜひ思いをめぐらせてみてくださいね。

写真:BEEK magagine

文:日菜子